慈恵 季刊誌
季刊誌 慈恵より 読者 藤井隆子さんよりの
投稿の 紹介をさせていただきます。
小太郎伝説
三鷹市 藤井 隆子
小太郎は 生後14年の好々爺猫 である。今も彼は 私に体をド-ンと預けて、
憩いの 一時を過ごしている。体格は 7キロの大関クラス。よりかかられると
時々 足がしびれる程だ。ハンサムで 行い澄ました顔をしているが、彼が
無意識にしていることでは、仲々見のがせない 伝説的な ことが多い。
10年程前からの同居だが、寒い夜に、カ-テンレ-ルを渡ってる時、
小太郎の重みで カ-テンレ-ルがグニャリと 曲がったことがある。
カ-テン一枚でも 冷えが しのげるのに、途方にくれたことがある。
テ-ブルの上の ものを 手当たり次第に 落とす時期があり、近くで
寝ている 私の 右目に、しまい忘れた 湯のみを 落とされたこと
等々、数えあげれば キリがないが、数ある伝説の中で、二三 心に
刻まれるものを 思い出している。重い体を じっとりと 預けられながら、
印象に残ってる ものを したためている。同居を始めた 10年前の夏、
玄関の網戸の前に どっかりと坐り 安全、防犯は任せろ と ばかり
外を見ている。頼母しさは オスと言うのは 使えると 思った時、
チャイムが鳴った。その時、小太郎は ぐっと 来客を にらむかと
思いきや、はじかれたように立って、目は うつろで すっかり
腰が引けて、あわてて 姿をかくす 場所と すきまを 捜している。
来客が 帰ると 何事も なかったように、残っている 餌の皿に
鼻を 突っ込んでいる。あの雄姿は 何だったのかと 思い出す毎に
家族と笑っている。何年か前には 靴運び事件 が あった。
断わっておくが 小太郎は 猫である。私と 娘の 靴が 片方ずつ、
枕元や ガラス戸の近くに 別々に 置かれている。夜中 ムギュ-
フギャ- の 声に目ざめて見ると、暗に 廊下を 片方の靴を
せっせと運ぶ 小太郎を見て よく稼ぐなあ と 低く声を かけたことがある。
何が目的だったのか、今 もって 分からない。時には この世の諸々を すべて
悟ったような 顔付きで 眠ってる風なのに、娘が さきいかの 袋を あける音で、
急いで キッチンに行く。そして 彼女の仕事が終わる迄、じっと キッチンの
マットで 待っている。いったん さきいかの 支給が始まると オレ 待てないよ
と 次々と 催促する。悟り風の 表情は 何だったのかな。何故と聞きたい ことの
一つに、戸棚を あけると、居心地 悪そうに 鍋のふたに 坐っていたこと。
大笑いを させて、何事もなく 悟りの表情で 憩う様に、癒されたり 驚いたりである。
彼は 己の 日々を 幸わせと思っているか どうか知らないが、私を同期と思うのか、
一日を終えると、私の枕を 自分のベットと 思っているのか、実に自然に 枕を占領して、
共に テレビのドラマを 見ている。面白いね フニョ 眠いね ハニョ と 二言三言
交わして 一日を終える。小太郎も 私も 余生を過しているが、そこそこ幸わせと
受け止めて、明日を迎えようと 思っている。一緒だよね 寝言 小太郎クン !
慈恵院
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